日本の政界ではここ數日、安保法案をめぐって與野黨の激しい攻防戦が繰り広げられている。一方には與黨?自民黨、もう一方には民主黨を初めとする各野黨が陣取り、雙方は互いに非難し、譲ろうとしない。焦點は唯一つ、集団的自衛権の行使にかかわる安保関連法案を今國會會期中に成立できるかにある。安倍首相率いる自民黨は、安保関連法案を一気に成立させ、集団的自衛権の自由な行使を可能とし、日本の軍事大國化に必要な國內の法的基盤を整えることを目論んでいる。一方の野黨は、安倍內閣の暴走を食い止めるため、安保法案の採決をできるだけ遅らせようとしている。安保法案をめぐって與野黨各勢力が激しい論爭を展開する中、安倍首相は法案成立のための國會會期の大幅延長に踏み切った。強引なこの手法には様々な非難が上がっているが、安倍首相にとっては最後の一手となる。(文:厖中鵬?中國社會科學院日本研究所副研究員)
與野黨は激しい論爭を繰り広げているが、日本と世界の世論が注目しているのは、安倍首相が進める安保法案の審議がいかなる結末を迎え、いかなる方向に進むかである。日本の今後しばらくの戦略方向にかかわる極めて重要な問題となる。以下では、筆者の予想するいくつかのシナリオについて検討する。
▽第1のシナリオ:與黨による一方的な法案成立
安倍首相にとって最も理想的なシナリオは、野黨のボイコットにもかかわらず、安保法案が9月末の國會會期中にスムーズに成立することである。そうなれば安倍首相が夢見る集団的自衛権行使が可能となり、日本は軍拡と戦爭準備の道を歩めるようになる。日本の與野黨とアジア太平洋地域など國際社會にとっては、それぞれの明暗の分かれるシナリオともなる。安倍首相にとっては、外祖父?岸信介の期待に応えて「鉄腕首相」となるための歴史的な成果となる。日本の野黨や國民、國際社會にとっては、極めて大きな危険をはらむシナリオとなる。「不戦の力」を失った日本は、軍事力を総動員して米國に追隨し、地球上のいかなる場所にも赴かなければならなくなる。野黨は力のなさを露呈する。日本國民にとっては、子どもや孫が徴兵を受けて戦場に赴き、流血や負傷の危険にさらされる可能性が生まれる。第2次大戦の侵略の歴史を徹底的に反省することができないばかりか、これを美化しごまかし続ける國の軍拡は、國際社會にとっては悩みの種となる。
▽第2のシナリオ:與野黨が譲歩しての法案成立
與野黨と各政治勢力が裏工作を含めた活発な駆け引きを繰り広げ、雙方が譲歩する形で安保法案が成立するというシナリオ。野黨が安保法案に制限條項を加え、集団的自衛権の行使に歯止めをかけることに成功する。野黨(最大野黨である民主黨は特に頑張る必要がある)は脇役に追いやられることなく、野黨としての健全な役割を発揮する。安倍首相率いる自民黨內にも集団的自衛権行使に慎重な人は少なくない。連立與黨の一端を擔う公明黨も集団的自衛権については獨自の見方を持っている。自民黨內と連立與黨の結束力を確保し、「橫暴」や「獨裁」といったマイナスイメージを與えないため、安倍首相が各者の利益を比較判斷し、安保法案の一部の條項に決定的な修正を加えることは十分に考えられる。一方では野黨の理解を取り付け、もう一方では黨內慎重派や連立相手の公明黨に譲歩し、安倍陣営への支持とその力を高めるためである。そのためには與野黨と各政治勢力が妥協しなければならないが、妥協するということは、それぞれに不満が殘るということでもある。誰にとっても理想的とは言えないこのシナリオだが、安全保障面での安倍首相の暴走に必要とあればブレーキがかけられるというメリットがある。安保法案はこの場合、集団的自衛権の行使に一定の制限を加えるという前提下で採択される。野黨の力を示すため、民主黨を初めとする各野黨は、集団的自衛権行使にかかわる今後の行動において、安倍首相を牽制する役割を擔うこととなる。このような牽制は日本の庶民にとってはプラスに働き、軍事大國への日本の歩みを制約するものとなる。