世界では中國に関してこんな疑問がささやかれている。中國は、世界秩序における米國の指導的地位に挑戦しようとしているのではないか?,F在の世界秩序と並行するもう一つの世界秩序を作り出そうとしているのではないか。我々の答えはもちろん「ノー」である。中國は國際秩序の一員である。だが雙方が口にしているのは同じ「秩序」なのだろうか。こちらの「秩序」とあちらの「秩序」は違うもののようにも見える。(文:傅瑩。全國人民代表大會外事委員會主任委員、中國社會科學院グローバル戦略シンクタンク首席學者、中國國際経済交流センター特別招聘副理事長)
「米國指導下の世界秩序」と言われるものには3つの柱がある。第一に、米國式の価値観であり、これは「西洋的価値観」とも言われる。第二に、米國の軍事同盟體系である。これは、米國が世界で「指導」的な役割を発揮する安全面での基盤となる。第三に、國連を含む國際機関である。この「世界秩序」と言われるものは、國際政治においてその歴史的起源を持ち、現代世界においてその役割を発揮している。米國は長期にわたってこの秩序において指導的地位を占め、そこから利益を得てきた。だが経済のグローバル化が進み、國際政治が斷片化を深める今日、この「世界秩序」はますます多くの現実的挑戦に直面するようになり、全面的で有効な解決プランを提供することはますます難しくなっている。
政治レベルでは、米國が推進する西洋的価値観に基づいたやり方は多くの地域で適応の困難に直面している。とりわけ一部の中東諸國では、古いレジームが打ち破られた後、新たな社會的枠組みがなかなか構築できないという問題が起こっている。こうした國々は深刻な動亂に陥り、動亂は國外にも広がっている。防衛分野では、米國の主導する軍事同盟體系は往々にして、同盟國の安全面での利益を非同盟國の安全面の利益の上に置くことで、地域が抱えている問題をさらに複雑にする新たな要素を加えている。経済レベルでは、2008年に起こった國際金融危機によって國際経済統治の欠陥が明らかとなり、世界統治の改革プロセスは主要20カ國(G20)が牽引するようになった。
こうした狀況を背景として、経済規模の増大と世界における影響力向上の著しい中國が、いかなる立場を取るかに、人々の関心が集まっている。中國の指導者は、既存の國際秩序を支持するとの立場を繰り返している。だが中國人が使っているのは「國際秩序」という言葉であり、「世界秩序」という言葉ではない。これが指すのは、國連憲章の目的と原則を核心とした國際的な秩序と體系である。中國は、既存の國際秩序に帰屬感を持っており、その創始者の一つであると同時に、受益者?貢獻者でもあり、さらにはその改革の參加者でもある。
習近平主席は昨年9月、米シアトルで講演した際、「世界では多くの國々、とりわけ數多くの発展途上國が、國際體系がより公正で合理的な方向へと発展することを望んでいる。だがこれは(既存の體系を)ひっくり返してもう一度やり直すということでも、ほかにもう一つの體系を作り出すということでもなく、時代とともに進化し、これを改革?改善していくということだ」と語った。