【第144回】知的財産ライセンス契約における中國獨禁法の適用問題(七)

今回は、前回に引続き、知的財産権により獲得される市場支配地位の濫用行為について、「知的財産領域における獨禁法の適用問題に関する指針」意見募集第5稿上の禁止規(guī)定を中心に解読しておく。

（一）改良技術(shù)の獨占的ライセンス制限

これは、ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーが開発した改良技術(shù)について、ライセンサーに獨占的ライセンスをする義務を課す制限行為を意味する。

これにより、技術(shù)市場又は製品市場におけるライセンサーの地位を更に強化され、また、ライセンシーに改良技術(shù)を利用させないことで、ライセンシーの研究開発意欲をも損なわれる。

現(xiàn)在、改良技術(shù)の獨占的ライセンス制限が、合理的理由がなければ、市場支配地位の濫用行為に該當するので、獨禁法により禁止される。

ただし、この場合、禁止されるのは、ただ改良技術(shù)の獨占的ライセンスであり、改良技術(shù)の非獨占的ライセンス制限をライセンシーに課するのは問題ない。その理由は、もしライセンサーが改良技術(shù)のライセンスを取得できないのであれば、自分より生産効率が高いことを顧慮し、そもそも技術(shù)をライセンシーにライセンスしないことになりかねない。したがって、この點から見て、改良技術(shù)の非獨占的ライセンス制限が技術(shù)の流通を促進できると言える。ただ、非獨占的ライセンス制限だけでは技術(shù)流通促進の目的を?qū)g現(xiàn)でき、獨占的ライセンス制限をライセンシーに要求する必要がない。

実は、先進國の立法例をみれば、改良技術(shù)といっても、更にライセンス技術(shù)と分離可能の改良技術(shù)と、分離不可能の改良技術(shù)（ライセンス技術(shù)なしには利用できないもの）に分けられる。分離不可能の改良技術(shù)に対して、獨占的ライセンス制限を課することができるか、なお検討する余地がある。意見募集第5稿における改良技術(shù)が専ら分離可能の改良技術(shù)を意味しているので、今後の立法上の変化に留意する必要がある。

（二）権利の有効性について爭わない義務

これは、ライセンス技術(shù)の有効性を爭わないことをライセンシーに要求することを意味する。しかし、無効な知的財産権である以上、だれでもこれを利用することができ、ライセンス料を支払う義務もなく、ライセンサーの制限を受取る必要もない。権利の有効性について爭わない義務をライセンシーに要求できるならば、ライセンシーの自己保護の救済方式を奪うほかならない。したがって、権利の有効性について爭わない義務は、合理的理由がなければ、市場支配地位の濫用行為に該當するので、獨禁法により禁止される。