ブリンケン米國務長官のオーストラリア訪問は米日印豪間にさざ波を起こしているが、日本を若干困惑させてもいる。米國は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)に復帰しないことを前提に「インド太平洋経済枠組み」を打ち出した。換言するなら、米國は「インド太平洋地域」の外交?安全保障を主導するだけでなく、対中牽制の狙いが顕著なこの広範な地域経済戦略に日印などを引き込もうとしているのだ。日本にとって、この「インド太平洋経済枠組み」への対応は極めて厄介な問題だ。下手すると自らの足元を崩すことになるからだ。(文:笪志剛?黒竜江省社會科學院東北アジア研究所所長。環球時報掲載)
まず、日本の困惑は自國の役割をめぐる心理的葛藤のためだ。日本にとって「インド太平洋地域」は長年開拓してきた主要な経済地域であり、南アジアは日本企業の新たな産業輸出地となっており、東南アジアに至っては日本経済の「裏庭」と見なしている。2020年の東南アジア諸國との貿易額は2040億ドル(1ドルは約116.0円)、ASEANへの投資額は2兆3000億円に達した。日本は、この「インド太平洋経済枠組み」を通じて、自らの長年の苦労の成果を米國に摘み取られ、自らの「インド太平洋経済構想」が希薄化することを望んでいないのだ。
ましてや日本には、2018年に発効したCPTPP、続いて発効した域內包括的経済連攜協定(RCEP)がある。日本は「インド太平洋経済枠組み」が米國の離脫した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の代替物となり、自國の主導したCPTPPが有名無実化し、RECP協力も弱まることを懸念しているのだ。
次に、日本の困惑は、自國の通商上の利益に対する影響を懸念しているためでもある。
第1に、既存の多國間通商枠組みをどう強固なものにするか。日本は多國間通商主義を粘り強く堅持し、長年努力してようやく米國不在の中でCPTPPを発効させ、米國の圧力に抗してRCEPの発効にこぎつけた。岸田文雄政権発足後は、RCEPやCPTPPなどの枠組みを利用して、日本が長年努力して培ってきた多國間通商における優位性を維持している。
第2に、中國との経済?貿易関係の重要性という現実とのバランスをどう取るか。2021年の中日貿易は3714億ドルに達し、中國の消費者市場は日本経済全體の安定にとって重要なファクターとなっている。中日間の経済的補完性は、日米間のそれとは比較にならないほど高い。そのため日本は慎重に中米の間でバランスをとるしかない。
第3に、この枠組みの有効性をどう確認するか。この枠組みには貿易の円滑化、デジタル貿易、サプライチェーンとグリーン?テクノロジー、労働基準、インフラ、低炭素といった要素が盛り込まれているが、それをどう実現するのか、參入措置や具體的道筋はどうなるのか。日本だけでなく、東南アジアの一部の國々も、米國のこの動きが內政に対処するための場當たり的な思い付きではないかと懸念している。(編集NA)
「人民網日本語版」2022年2月14日