日本の文物は主に、四つのレベルに分けられる。つまり、國寶、重要文化財、重要美術品と一般美術品だ。2001年6月まで、國寶に指定された文物は1059點で、そのうち、8點が中國の磁器だ。
この8點の磁器で、4點が宋代建窯、1點が宋代吉州窯、2點が宋代龍泉窯、1點が元代龍泉窯だ。
1.宋代建窯曜変天目茶碗
南宋時代(12~13世紀)。東京靜嘉堂文庫美術館所蔵。
高さが7.2センチ、口徑が12.2センチ、高臺徑が3.8センチ。1966年6月に國寶に指定された。
「曜変」とは元來「窯変?「容変」を意味し、唐物茶碗「土之物」の筆頭に分類格付けされてきた。「星」または「輝く」という意味をもつ「曜」の字を當てて文獻に記されるようになるのは、十五世紀前期の頃からである。靜嘉堂所蔵の曜変天目は、もと將軍家所蔵であったものを淀藩主稲葉家が拝領し、代々秘蔵したことから「稲葉天目」と稱される。産地は中國福建省建陽県に位置する建窯であり、窯址調査から、そのうちの蘆花坪窯である可能性が考えられているが、まだ曜変の明瞭な斑文を伴う陶片は出土していない。今日、世界中で現存する曜変天目茶碗は三點(京都?大徳寺龍光院、大阪?藤田美術館、靜嘉堂)であり、斑文の美しさはそれぞれ別趣であるが、すべて寸法や器形が酷似している。いずれも焼成前に決定されているはずの素地土は最良のものが用いられ、高臺の削り出しも精緻を極めていることから、曜変天目は、焼成中の偶然の所産であったばかりでなく、陶工が試行錯誤の果て、わずか完成をみた作品であった可能性もあるであろう。
本器は徳川將軍家(柳営御物)、淀藩主稲葉家、小野哲郎(大正7年、1918年)、巖崎家(昭和9年、1924年)、靜嘉堂文庫美術館などに伝わってきたことが知られる。